EC

売れるコンセプトを1文で言い切る作り方

年商1億を超えるブランドと、3,000万で頭打ちになるブランド。自分がいくつものECブランドを見てきて感じるのは、その差が商品の品質でも広告費の大小でもチームの規模でもなく、「コンセプトを1文で言い切れるかどうか」に大きく左右されている、ということです。今日はその1文の作り方を、まるごとお話しします。

売れていない事業者さんに「コンセプトを一言で教えてください」と聞くと、だいたいこうなります。

「えっと、うちの商品は国産のオーガニック原料を使っていて、製法にもこだわりがあって、添加物も入っていなくて……」

30秒経っても終わりません。

一方で、自分が立ち上げに関わったMAMEILは、広告費ゼロで3ヶ月5,000万円を売りました。コンセプトはたった1文です。

1粒に168時間かけた、Instagramでシェアしたくなる宝石のような生チョコマカロン。

自分はこの「たった1文」をコンセプト・ワンライナーと呼んでいます。

説明を盛るほど何も残らず、1文に絞った商品だけがお客さんの記憶に残ります
説明を盛るほど何も残らず、1文に絞った商品だけがお客さんの記憶に残ります

お客さんが商品ページにいるのは15秒

大前提として、お客さんはあなたの商品に興味がありません。厳しい言い方ですが、これは認めるところから始まります。

ECのお客さんが商品ページに滞在する時間は、平均で15〜30秒。その間に「これは自分のための商品だ」と思わせられなければ、二度と戻ってきません。

なぜ15秒なのか。ECではお客さんが常に「比較」しているからです。楽天やAmazonで検索すれば同じカテゴリの商品が50個出てきます。その中からあなたの商品ページを開いて、15秒で「違い」がわからなければ、ブラウザバックして次の商品へ行く。

30秒かけてもコンセプトを説明しきれない商品が、15秒で伝わるわけがないんです。

自分も昔、あるブランドの立ち上げで同じ罠にハマりました。「原料が良い」「製法が特殊」「こだわりがすごい」、全部伝えようとして、結局何も伝わらなかった。広告を回しても転換率は0.3%。月の広告費が200万で、売上が180万。赤字でした。正直、焦りました。

でも、コンセプトを1文に絞り込んだ瞬間に転換率が1.2%、約4倍にまで跳ね上がりました。商品は一切変えていません。変えたのは「何を一番に伝えるか」だけです。

1文に絞ると売れる、3つの理由

なぜ1文に絞ると売れるのか。理由は3つあります。

1つ目は、お客さんの「判断コスト」が下がるから。情報が多いと、人は判断を先延ばしにします。「あとで考えよう」は、ほぼ「二度と戻ってこない」と同じです。

2つ目は、口コミが生まれやすくなるから。「あの化粧水良かったよ」と友達に薦める時、30秒の説明が必要な商品は薦められません。「一粒に168時間かけた生チョコマカロンなんだけど」これなら一瞬で伝わります。

3つ目は、マーケティングの全施策に一貫性が出るから。広告コピー、LP、Instagram投稿、同梱チラシ、すべてが1文からの逆算で作れます。チームの誰が作っても、ブレません。

商品を変えずに伝える順番を絞っただけで、転換率は0.3%から1.2%へ動きました
商品を変えずに伝える順番を絞っただけで、転換率は0.3%から1.2%へ動きました

コンセプト・ワンライナーの5要素

では、その「たった1文」をどう作るのか。自分が現場で使っているフレームを公開します。コンセプト・ワンライナーは、5つの要素でできています。

この商品は【イシュー】という課題を持つ【ターゲット】が、【シーン】の時に使う【ソリューション】です。既に人気の【競合商品】と違い、【差別化ポイント】という点が特徴です。

この1文が書けたら、あなたの商品コンセプトはできあがりです。逆に言えば、この1文が書けないなら、まだ商品を売る準備ができていない。ここからは各要素を順番に見ていきますが、要素ごとの深掘りは別記事に分けているので、適宜そちらをたどってみてください。

要素①:イシュー(課題)を絞り込む

最初に決めるのは「お客さんが抱えている課題」です。ここで9割の人が間違えます。

よくある失敗が「肌荒れに悩んでいる人向けの化粧水」。一見よさそうですよね。でもこれ、イシューの解像度が低すぎるんです。

「肌荒れ」って何ですか。ニキビですか。乾燥ですか。赤みですか。季節の変わり目の揺らぎですか。ピンボケしている商品は、どれだけ広告費をかけても刺さりません。

なぜか。お客さんは「肌荒れ」では検索しないからです。「マスク 肌荒れ 赤み」とか「季節の変わり目 頬 カサカサ」で検索する。イシューは、お客さんが実際に使う言葉のレベルまで落とし込まないといけない。

イシュー・ボケが起きる根本は「作り手目線」から抜け出せていないことです。作り手は「肌荒れ全般に効く」と思って作っている。でも、お客さんは「自分の特定の悩み」しか見ていない。この視点のギャップを埋めるのが、イシューの解像度を上げるということです。

  • NG例:肌荒れに悩んでいる人
  • OK例:マスク生活で頬の赤みが消えなくなった人

この差が、転換率でいうと2〜3倍変わってきます。冗談ではなく。課題そのものの掘り方やN1の深掘りはお客さんが本当に解決したいことの見つけ方で詳しく書いているので、あわせて読んでみてください。

要素②:ターゲットを「行動」で定義する

次にターゲットですが、ここでも致命的なミスが起きます。「ターゲットは?」と聞くと「30代女性です」と返ってくる。自分は心の中で「それ、ターゲットじゃなくてただの属性情報です」と思っています。

ターゲットは属性ではなく「行動と心理状態」で決めるものです。「30代女性」ではなく、「スキンケアにお金をかけてきたのに効果が出ず、次に何を試せばいいかわからなくなっている人」。

ここまで絞り込むと、商品ページのコピー、広告のクリエイティブ、LPの組み立て、全部が変わります。「次に何を試せばいいかわからない人」に向けて書くコピーと、「30代女性」に向けて書くコピーは、まるで別物です。

そして一番大事なのが、イシューとターゲットの「噛み合わせ」です。例えば「マスク肌荒れ」というイシューに対して、ターゲットが「美容意識の高い20代」だったら、微妙にズレていますよね。マスク肌荒れで本当に困っているのは、接客業や医療従事者など「マスクを外せない環境にいる人」です。ターゲットをライフスタイルや職業まで掘り下げると、イシューとの噛み合わせが一気に上がる。これが、お客さんに「これ、まさに自分のことだ」と思わせる原動力です。

自分が見てきたあるスキンケアブランドでは、ターゲットを「30代女性」から「在宅勤務でZoom映りが気になり始めた30代後半の女性」に変えただけで、Meta広告のCTRが2.1倍になりました。広告クリエイティブの画像は変えていません。コピーの切り口が変わっただけです。ターゲットを行動で絞る考え方はECのターゲットを行動で絞り込む方法で深掘りしています。

属性だけのターゲットは画像も変えずにスルーされ、行動で絞った瞬間にCTRが2.1倍へ動きます
属性だけのターゲットは画像も変えずにスルーされ、行動で絞った瞬間にCTRが2.1倍へ動きます

要素③:シーンで「脳内プレビュー」を発動させる

3つ目の要素が「シーン」です。軽視されがちですが、めちゃくちゃ重要です。

お客さんが商品を「いつ」「どこで」「どんな状況で」使うのか。これを具体的に描けるかどうかで、「欲しい!」の強さがまるで違います。人はスペックでは動きません。「自分がその商品を使っている瞬間」をイメージできた時に初めて、買いたくなる。

自分はこれを脳内プレビューと呼んでいます。お客さんの頭の中に「使っている自分」の映像を再生させる。これができるかどうかが、ECの転換率を左右する最大の要因だと思っています。

例えば、プロテインを売るとします。

  • シーンなし:高品質なホエイプロテイン
  • シーンあり:朝のトレーニング後、シャワーを浴びながら片手で飲める30秒プロテイン

後者の方が圧倒的に「欲しい」と思いませんか。

なぜ脳内プレビューがこれほど強いのか。人間の脳は「体験した記憶」と「想像した体験」を区別するのが苦手だからです。シーンを具体的に描かれると、脳はあたかもその体験をしたかのように反応する。だから「欲しい」という感情が生まれます。

商品ページで「朝、忙しい出勤前に」「夜、子どもを寝かしつけた後の10分で」と書くだけで、お客さんの脳内に映像が走る。この映像が、購入ボタンを押させる最後のひと押しになります。

要素④:ソリューションに「メカニズム」を入れる

4つ目はソリューション、つまり「あなたの商品が提供する解決策」です。

注意してほしいのは、ソリューション=商品名ではないということ。「うちの化粧水です」はソリューションではありません。「バリア機能を回復させて、赤みを根本から鎮めるセラミド化粧水」がソリューションです。※薬機法は加味する必要がありますので必ず注意してください。

ソリューションには「どう解決するのか」のメカニズムが含まれていないといけない。お客さんは「化粧水が欲しい」のではなく「赤みを消したい」のです。その「消し方」まで提示できて、初めてソリューションとして効いてきます。

自分が関わったサプリメントブランドでは、この部分の改善だけで月商が1.5倍になりました。「高品質なビタミンCサプリ」を「腸まで届いて、朝の肌のくすみを内側からクリアにする持続型ビタミンC」に変えただけ。商品の中身は全く同じです。伝え方を変えただけで、数字がここまで動きました。

メカニズムを入れる理由は、もう1つあります。お客さんは「なぜ効くのか」の納得感がないと、高単価商品にお金を払いません。「良い化粧水です」だと3,000円。でも「セラミドがバリア機能を回復させる」と言えた瞬間、8,000円でも「それなら試してみたい」になる。メカニズムは、価格を正当化するエンジンでもあります。

要素⑤:競合が真似できない差別化ポイントを選ぶ

最後の要素が「既に人気の競合商品と、何が違うのか」。ここが曖昧な商品は、価格競争に巻き込まれて終わります。

差別化ポイントを考える時のコツは、「競合が絶対に真似できないこと」に絞ること。「品質が良い」「原料が良い」は差別化になりません。全員そう言っているからです。

じゃあ何が差別化になるのか。自分が現場で見てきたパターンは3つです。

パターン①:製造プロセスの異常さ。例:「1粒作るのに168時間かかるマカロン」。MAMEILの場合、この製造プロセスの異常さ自体がコンセプトの核になりました。広告費ゼロで3ヶ月5,000万円売れた理由の大部分は、「168時間」という数字が持つ衝撃です。「そこまでやるの?」と思わせる狂気が、最強の差別化になります。

パターン②:体験の独自性。例:「開封した瞬間、香りに包まれる」。商品そのものではなく、購入から開封、使用までの体験全体で差別化する。ECだからこそ、届いた瞬間の驚きがInstagram投稿を生み、口コミになる。開封体験はD2Cの最大のアセットです。

パターン③:逆張りポジション。例:「あえて効能を謳わないスキンケア」。業界の常識と真逆のポジションを取ることで、「他と全然違う」と一瞬で認知される。ただしこれは上級者向けです。市場理解がないと単なる奇策で終わります。逆張りの前に、まずは市場の「当たり前」を100個リストアップしてみてください。

差別化ポイントの選び方と競合の読み方は競合と被らないポジションの取り方でさらに掘り下げています。

品質や原料では誰も差別化できず、製造の異常さ・体験・逆張りのどれかに振り切ったブランドだけが選ばれます
品質や原料では誰も差別化できず、製造の異常さ・体験・逆張りのどれかに振り切ったブランドだけが選ばれます

5要素を組み合わせて、1文にする

ここまでの5要素を組み合わせて、実際のワンライナーを作ってみましょう。

【ダメな例】「高品質なオーガニック化粧水です。敏感肌の方に。」

イシューがない。ターゲットが曖昧。シーンもない。差別化もない。これでは、棚に並んだ100本の化粧水と何も変わりません。

【コンセプト・ワンライナーで作り直した例】「マスク生活で頬の赤みが消えなくなった接客業の女性が、夜のスキンケアの最後に塗るだけで翌朝の赤みを鎮める、バリア回復型セラミド美容液。既存の敏感肌向け化粧水と違い、赤みの原因であるバリア機能の低下に直接アプローチする。」

長いと思いましたか。少し長いので、コピーとしてはそのまま使えません。でもこの1文が書けた時点で、商品ページのコピー、広告のキャッチコピー、Instagram投稿のキャプション、全部がここから逆算で作れるようになります。

コンセプト・ワンライナーは「地図」です。この地図がなければ、マーケティングのあらゆる施策がバラバラの方向に走り出す。逆にこの地図さえあれば、チームの誰が施策を作ってもブレません。実際のキャッチやコピーへの落とし込みは伝わるEC商品コピーの磨き方を見てみてください。

よくあるQ&A

「でも、うちの商品は1文じゃ収まらないんですよ」

めちゃくちゃわかります。自分もよく聞く声です。でも、はっきり言わせてください。1文に収まらないのは、商品の問題ではなく、思考の整理ができていないだけです。

AppleのiPhoneだって1文で言えます。「電話とiPodとインターネットデバイスを1台に統合した、ポケットに入るコンピュータ」。世界で最も複雑な製品の1つであるiPhoneですら、1文で言える。あなたの化粧水やサプリメントが1文で言えないはずがないんです。

「絞ったらお客さんが減りませんか?」

これも本当によく聞かれます。答えは逆です。絞った方が刺さるし、刺さるからこそ広がります。

ターゲットを「肌荒れに悩む全ての人」にした化粧水と、「マスク赤みに悩む接客業の方」に絞った化粧水。後者の方がSNSでシェアされます。「マスク赤みに悩む接客業」の人が「これ、まさに私のための商品!」と思うからです。

「まさに私のための商品」。この感覚を生み出せるかどうかが、EC事業の成否を分けます。そしてこの感覚は、コンセプトを広げると薄まり、絞ると強くなります。

「コンセプトを1文にまとめる時間がないです」

正直に言いますが、コンセプトが曖昧なまま広告を回す方がよっぽど時間とお金のムダです。月の広告費が100万だとして、転換率が0.5%と1.5%では、年間で数千万円の差が出ます。その差を生むのが、この「1文」に費やす数時間です。

明日から作る、3ステップ

最後に、実際にワンライナーを作るための手順を3つだけ。

ステップ①:お客さんの「検索キーワード」を100個書き出す

あなたの商品を買いそうな人が、Googleや楽天で実際に打ち込む言葉を100個書き出してみてください。ラッコキーワードやGoogleサジェストを使えば30分で終わります。

例えばプロテインなら、「プロテイン 朝 飲みやすい」「プロテイン 筋トレ後 すぐ飲みたい」「プロテイン 甘くない 男」。この100個の中に、イシューとシーンのヒントが全部隠れています。お客さんが実際に使っている言葉を拾い上げることで、イシュー・ボケを防げます。

ステップ②:「誰の」「何を」「どう解決するか」を各20文字以内で書く

20文字の制約が大事です。長く書くと、イシューがピンボケするからです。20文字以内に収まらないなら、まだ絞り込みが足りていない証拠。

例えば、「誰の」→ マスクで頬が赤くなる接客業の女性(18文字)、「何を」→ 翌朝まで消えない頬の赤み(12文字)、「どう」→ セラミドでバリア機能を回復(13文字)。

ステップ③:競合商品を5つ買って「うちだけの違い」を1つ選ぶ

5つの競合を実際に購入してください。使ってください。ネットのレビューを読むだけでは絶対にダメです。自分の五感で体験して初めて、「ここが違う」が見えてきます。

自分がいつも言うのは「競合商品を自腹で買え」です。5つ買っても1〜3万円。広告費1日分以下の投資で、差別化の答えが見つかります。

キーワード100個・各20文字・競合5つ。この素材集めを終えると、あとは公式に当てはめるだけで1文が立ち上がります
キーワード100個・各20文字・競合5つ。この素材集めを終えると、あとは公式に当てはめるだけで1文が立ち上がります

この3ステップを実行すれば、コンセプト・ワンライナーの素材は揃います。あとは公式に当てはめるだけです。

この商品は【イシュー】という課題を持つ【ターゲット】が、【シーン】の時に使う【ソリューション】です。既に人気の【競合商品】と違い、【差別化ポイント】という点が特徴です。

最後に

この1文が完成すると、あなたのEC事業のマーケティングは一本の軸でまとまります。なお、その軸のさらに上流にあるブランドの提供価値そのものはブランドのMVVと提供価値の決め方で、マーケ全体の地図はECマーケティングの全体像で扱っています。

コンセプトが曖昧なまま広告を回している事業者さんは、本当に多いです。でも、広告の前にやるべきことがある。まず、この1文を作ってみてください。

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