EC

ECマーケティングの全体像。商品・チャネル・販促を分けて考えない

広告も回しているし、Amazonにも楽天にも出している。それなのに利益が残らない。こういう相談を、自分はよく受けます。

話を聞いていくと、悪いのは大抵個別の施策ではありません。商品の担当、モール運用の担当、広告の担当が別々に動いている。数字が噛み合っていないだけです。

自分は月間の営業利益がマイナス1億円だったEC会社を立て直した経験があります。そこで分かったことがあります。伸びない会社ほど施策の数は足りていて、施策と施策の間をまとめる動きだけが抜けている。そういうことでした。

EC市場はもう、自然には伸びない

経済産業省が2025年8月に公表した調査では、物販系のBtoC-EC市場規模は約15.2兆円(2024年)です。EC化率は9.78%。ECマーケティングは、ここを一つの流れとしてまとめないと利益が残りません。アメリカの20%、中国の50%と並べると、数字のうえでは伸びしろがまだあります。

ただ、勝手に伸びる局面ではなくなりました。2020年はコロナ特需で成長率が21.71%まで跳ね上がりましたが、2024年は3.70%まで鈍っています。出店して広告を少し回せば右肩上がり、という追い風はもう吹いていません。

数年前なら同じやり方で伸びた商材が、今は何をやっても伸びなくなりました。自分の周りでも、そう言う事業者が増えました。

市場は15.2兆円でEC化率9.78%とまだ伸びしろがあるのに、成長率は21.71%から3.70%まで鈍った。
市場は15.2兆円でEC化率9.78%とまだ伸びしろがあるのに、成長率は21.71%から3.70%まで鈍った。

もう一つ、押さえておきたい数字があります。物販でみても今は9割前後が実店舗で起きていて、ECはまだ一部です。だから「ECか実店舗か」で分けて考えると、判断を間違えます。

お客さんはスマホで調べて店で買うし、店で現物を確かめてからECで買い直します。だから自分は、ECと実店舗を分けずに、一つの買い物として扱います。これをOMOと呼びます。

この記事で言いたいのは、たった一つです

商品・チャネル・販促・回収を、別々に考えない。

これだけです。商品企画の会社、モール運用の会社、広告代理店が別々に入る。それぞれは仕事をしている。

でも、せっかく固めたコンセプトが売り場に届かない。反応のよかった素材は広告で使われずに眠る。担当と担当の間で、情報がぽろぽろ落ちていきます。

施策が足りないわけじゃないんです。施策と施策の間に立つ人が、どこにもいないだけなんです。

例えば、新規を取りたいのにリピーター向けのクーポンに予算を使っている。投稿のいいね数は増えているのに売上は動かない。広告のクリックは順調なのに利益は減っている。

一つひとつの施策は悪くないのに、向きがバラバラだから、売上にも利益にも効きません。会議が「次は何をやるか」から始まっていたら、大抵ここがズレています。

では、向きを揃えるにはどうするか。自分は、考える順番を上から揃えます。何のためにやるのか(目的)。それをいくらの数字にするか(目標)。限られた人・商品・予算を、誰に何にどれだけ配って何を捨てるか(戦略)。最後に広告やLP、CRMといった実際の打ち手(戦術)です。

この順で決めると施策の向きが揃います。施策から話し始めると散らかってしまう。それだけのことなんですが、ほとんどの現場で逆になっています。

目的→目標→戦略→戦術を上から揃える。3つのズレは、上の階層を決めないまま施策へ飛ぶと起きる。
目的→目標→戦略→戦術を上から揃える。3つのズレは、上の階層を決めないまま施策へ飛ぶと起きる。

「来期に新規顧客の年間LTVを2万円まで伸ばす」。目標は、これくらい誰でも達成したか判断できる数字まで落とします。ここまで決まって、初めて商品も売り場も広告も同じ向きを向きます。

商品の根拠、売り場、素材を、一つの流れにする

順番が揃ったら、今度はその流れを途中で止めないようにします。自分はECマーケティングの仕事を、商品の根拠・売り場・素材の3つに分けて考えています。

まず、この商品がなぜ売れるのか。買ってほしい一人の顧客像を具体的に描いて、買う決め手をはっきりさせる。一人の顧客を深く掘るN1分析と呼ばれるやり方です。

次が売り場。Amazonや楽天での検索対策、サムネイルでクリック率を上げる工夫、商品ごとの広告効率。検索面と商品ページを合わせて取りにいきます。

最後が素材です。インフルエンサーに作ってもらった動画や写真を、広告にもLPにも商品ページにも活かす。撮る時点から、どこで使い回すかまで決めておきます。

商品の根拠→売り場→素材を一つの流れにすると、どこも取りこぼさない。
商品の根拠→売り場→素材を一つの流れにすると、どこも取りこぼさない。

多くの会社は、このうち1領域だけを担当します。だから層の間で情報が落ちます。商品も売り場も広告も同じチームが同じ数字を追い、おかしいと思ったその日のうちに直せる。そこまで来て、ようやく全体で利益が残ります。

そして、一番忘れられるのが売った後です。一度買ってくれたお客さんにもう一度買ってもらい、その一人当たりの生涯価値(LTV)をどこまで伸ばすか。

新規獲得には1件3,000円かけるのに、その後のメールや同梱物、定期の引き上げには誰も手をつけていない。こういう会社に、自分は何度も出くわしてきました。

獲得して終わりにせず、その後まで面倒を見る。ここまでが同じ一つの流れです。ここは別の記事「リピートとLTVの伸ばし方」で詳しく扱っています。

そもそも商品が市場と合っていなければ、運用は効かない

ここまで運用の話をしてきましたが、前提が一つあります。商品が市場の条件と合っていなければ、運用をどれだけ頑張っても利益は出ません。

商品の決め方には、よく2つの立場が出てきます。作りたいものを作るプロダクト・アウトと、声を聞いて作るマーケット・イン。自分はここに、もう一つの考え方を足しています。

AmazonのFBA倉庫に置けるサイズの制約、薬機法で使える表現、その商材の広告費の相場、インフルエンサーが投稿したくなる文脈。こうした変えられない条件を、企画の一番最初から逆算する。自分はこれをマーケティング・インと呼んでいます。そこから容量や価格、売り方を決めます。

作りたいものを作る、声を聞いて作る、その先に市場の変数から逆算するマーケティング・インがある。
作りたいものを作る、声を聞いて作る、その先に市場の変数から逆算するマーケティング・インがある。

具体的な話をします。1袋1,000円のサプリを単品で売ると、送料、決済手数料、出荷作業でおよそ270円かかります。つまり27%がコストで消えます。

これを3袋3,000円のまとめ売りにすると、送料と出荷作業はまとめても変わらないので、1袋あたりの固定費が3分の1になる。決済手数料はその分増えますが、それを差し引いても単位当たりの利益はくっきり残る。商品の中身を一切変えていないのに、電卓を叩いて単位当たりの利益を確かめるだけで、3袋セットが正解になります。

こういう逆算ポイントが10個あります。別の記事「売れるEC商品は逆算で決まる」にまとめました。

次に読む記事

この記事は、商品・チャネル・販促・回収を分けないという全体の話でした。一つひとつの中身は、各テーマの記事に書いています。

この全体像の下に、商品・売り場・広告・リピートそれぞれの記事があります。
この全体像の下に、商品・売り場・広告・リピートそれぞれの記事があります。

どこから手をつけるか迷うなら、まず何のためにやるか、どこへ向かうかの軸を決めるMVVの作り方から。その軸を数字に落とすのがEC戦略の立て方で、追う数字を1つに絞って何を捨てるかを決めます。次に、その数字を取りに行く相手を選ぶターゲティングへ。誰に売るかが決まると、ここから先の打ち手が揃えやすくなります。

商品の決め方なら売れるEC商品の10の逆算へ。Amazon・楽天で売上を伸ばすならモール攻略、自社ECの利益を整えるならD2Cの収益へ。

集客を厚くするなら、広告クリエイティブとKPIの逆算インフルエンサーとUGCの活かし方。その広告効率をチャネルをまたいで商品単位で測るならX-TACoSへ。

なぜ買うのかを掘るなら、顧客インサイトの掘り方競合を3つの層で読む。掘った中身を1文のコンセプトに言い切るなら売れるコンセプトを1文でへ。

最後の一押しなら、言葉で売上を動かすコピーライティングと、来た人を取りこぼさない買えるLPと購入導線

そして買った後のリピートで稼ぐなら、リピートとLTVの伸ばし方へ進んでみてください。

最後に

市場の成長に乗るだけで伸びた時代は、終わりました。これからの伸ばし方は、正直、地味です。サイズ、粗利、広告費、法律、売り場の条件を一つひとつ数えて、そこから商品と売り場と販促を逆算する。この泥臭い積み上げをやった会社だけが、何度でも勝てます。

施策はやっているのに利益が残らないなら、個別の施策を見直す前に、まず自問してほしいんです。

自分の会社で、一番利益を落としているズレはどこか。社内でそれを口に出してみる。自分はいつもそこから始めています。

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