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EC商品企画は逆算で決まる。売れる商品を組み立てる10の視点

良いものを作れば売れるはずだった。なのに棚に並べても、広告を回しても動かない。事業者の方から一番多く受けるのがこの相談です。売れるかどうかは、作る前にどこまで市場から逆算できていたかでほとんど決まります。少なくとも自分が立ち会ってきた範囲では、そうでした。

商品企画の第3の入口:作りたいものでも、顧客の声でもない

EC・D2Cの商品企画の話になると、大抵立場が2つに分かれます。作りたいものを形にするプロダクト・アウト。顧客の声に応えるマーケット・イン。自分はどちらにも乗りません。3つ目の入口、「マーケティング・イン」から商品を考えます。

市場には、企画の前から動かせない条件があります。AmazonのFBA(倉庫保管)のサイズ区分があって、薬機法で言える言葉と言えない言葉が決まっていて、今の広告費の相場があって、インフルエンサーが投稿しやすい文脈もある。

こういう市場の現実を、思いついた瞬間ではなく一番最初に全部計算へ入れて、そこから商品を逆算します。これがマーケティング・インです。

顧客の声を聞くだけでも、作りたいものを作るだけでも売れません。市場の現実から、商品を逆算する。

全体像はEC・D2Cの売上を伸ばす全体像でまとめています。この記事では、その逆算を商品企画に持ち込む10個の視点を扱います。自分が現場で実際に手を動かす順番に並べていきます。

10の逆算は「どこで戦うか、何を言うか、どう売るか、利益が残るか、運用が回るか」の5つにまとまる。
10の逆算は「どこで戦うか、何を言うか、どう売るか、利益が残るか、運用が回るか」の5つにまとまる。

アセット・イン/トレンド・イン:どこで戦うかを先に決める

最初に、自社が何で戦えるか、どの市場で戦うかを決めます。ここを外すと、残り8個をどれだけ丁寧にやっても挽回できません。

アセット・インは、自社だけが持つ真似されにくい強みから逆算します。一番多い失敗は、大企業で流行っている商品を真似すること。撥水技術を持つ工場が「上質な白T」を作ろうとする。これはユニクロの土俵で、勝ち目がありません。

同じ工場でも「絶対に汚れない白T」や「生乾き臭を寄せ付けないタオル」なら、その技術がそのまま買う理由になります。強みから考えると、戦う場所が自然と他社のいない側へ寄っていきます。

トレンド・インは、戦う市場そのものを選びます。体感では、売れるかどうかの8割はどの市場を選んだかで決まります。下りのエスカレーターをいくら速く駆け上がっても、疲れるだけで前に進みません。上りに乗れば、立っているだけで上がっていきます。同じ努力でも、伸びている市場を選べば数字が後ろから押してくれます。どこに資源を寄せて何を捨てるかはEC戦略の立て方で扱っています。

プロテイン市場が分かりやすいです。ボディビル向けは強い相手がひしめいて、値段も下がりきっている。一方で美容・ウェルネス・韓国式のインナーケアという文脈は、ここ数年で明らかに伸びています。

面白いのは、中身を変えなくていいところです。同じタンパク質の粉でも、マッスルパウダーとして売るか、インナーケアとして売るか。言葉を伸びている用途へ寄せるだけで、戦う市場がまるごと入れ替わるんです。

同じ撥水技術の工場でも、「上質な白T」だとユニクロと競合し、「絶対に汚れない白T」なら技術がそのまま買う理由になる。
同じ撥水技術の工場でも、「上質な白T」だとユニクロと競合し、「絶対に汚れない白T」なら技術がそのまま買う理由になる。
同じプロテインでも、伸びている美容・インナーケアの用途に言葉を寄せるだけで勝ちやすくなる。
同じプロテインでも、伸びている美容・インナーケアの用途に言葉を寄せるだけで勝ちやすくなる。

チャネル・イン/アルゴリズム・イン:売り場が形と価格を決める

どこで戦うかが決まったら、次は売り場です。商品の形も原価も、どの売り場で売るかでほぼ決まります。先に商品を作ってから売り場を探すと、大抵合わなくて立ち行かなくなります。

売り場ごとにルールがまるで違います。実店舗は棚の取り合いです。規格サイズに収まらない商品は、そもそも置いてもらえません。カテゴリにもよりますが、卸と小売で合わせて40〜60%乗ることもあります。

D2C(自社EC)は厚さ3cmの壁です。メール便で送れるか、高単価で定期購入を前提にできるかの勝負になります。Amazonは検索順位と手数料で利益が決まるので、サムネイルで一目で分かるキーワードが要る。かさばるだけで安い「空気を運ぶ」商品は、Amazonに向きません。これがチャネル・インです。

では、その売り場で誰が最初に商品を拾うのか。アルゴリズム・インは、顧客に届く前の門番に通用するかで考えます。ECならアルゴリズム、実店舗ならバイヤー。門番が判断する基準もプラットフォームごとに違います。Instagramは保存とシェア、TikTokは最後まで見られるか、Amazonは販売速度と購入率、楽天は流通総額。

この基準に乗らない商品は、顧客の目の前に出る回数そのものが減ります。

やってはいけないのは、全部の売り場で勝とうとすること。Instagram映えと検索キーワードとギフト需要を1つの商品で全部取ろうとすると、どこでも中途半端になります。モールごとの攻め方はAmazon・楽天モール攻略で深く扱います。ここでは「売り場が形と価格を決める」という順番だけ持って帰ってもらえれば十分です。

レギュレーション・イン:法律は攻めに使う

4つ目は法律の使い方です。多くの会社は、中身を作ってから「これ、どこまで言えるんだっけ」と後で言葉を探します。この順番だと遅いんです。「この言葉を言いたいから、この成分を入れる」と考えます。

例えば「シワ改善」と言いたいとします。化粧品では言えません。でも医薬部外品としてナイアシンアミドを規定量入れ、時間も費用もかけて申請を通せば、「シワ改善」と書けます。言える言葉が1つ増えると、広告でもLPでも商品ページでも、それがそのまま買ってもらう理由になります。

法律は、やってはいけないことを並べた守りのルールに見えがちです。自分は逆に、言える言葉を増やす攻めの材料として使っています。競合が言えないことを自社だけ言える。その状態を、申請の手間をかけて取りに行く。地味ですが、広告とLPで後からじわじわ効いてきます。

プロモーション・イン:売り方が中身を決める

普通は商品を決めてから売り方を考えます。自分は逆に、売り方から商品を決めることがよくあります。

媒体によって、売れる見せ方が変わるからです。InstagramやTikTokなら、スクロールの手を止める色や形や動き。GoogleやAmazonなら、検索される大きなキーワードを含んだ商品名そのもの。同じ商品でも、どこで売るかで正解が変わります。

数字から逆算すると、作る映像の方向まで絞れます。目標CPA(顧客獲得単価)5,000円から始めます。CPC(クリック単価)200円なら、1件売るのに25クリック。これだとCVR(購入率)4%が要る計算ですが、新規獲得でCVR4%はかなり高くて現実的ではありません。現実的なCVR2%で置くと、1件に50クリック要る。つまりCPCを100円まで下げないとCPAが合わない。そのためにはCTR(クリック率)の高いクリエイティブが要る。こうやって次の手が決まっていきます。

ここまで来ると、商品の中身まで変わります。毛穴の角栓が落ちる様子が伝わる映像でCTRを上げたい。それには洗顔ジェルが黒い方が、映像で差が出る。だから開発部に「炭か泥で黒くしてくれ」と頼む。広告の数字が、最後は商品の色まで決めてしまう。クリエイティブとKPIの逆算は効く広告クリエイティブとKPIの逆算で詳しく話しています。

目標CPA5,000円から逆算すると、CTRを上げる映像が要り、最後はジェルの色まで変わる。
目標CPA5,000円から逆算すると、CTRを上げる映像が要り、最後はジェルの色まで変わる。

コスト・イン/オペレーション・イン:ユニットエコノミクスで売れた後に潰れない

ここまでは「売れるか」の話でした。ここからは「売れた後に潰れないか」です。売れたのに会社が傾く。これは本当によくあります。

コスト・インは、電卓を叩いてから商品を決めることです。確かめるのはユニットエコノミクス。売上のLTVではなく、原価や送料を引いた後に残る粗利のLTV(顧客生涯価値)がCPAの3倍あるか、が一つの目安です。

例えば1袋1,000円のサプリを単品で売るとします。送料・決済手数料・受注処理で270円、つまり27%が消えます。3袋3,000円のまとめ売りなら、固定費が薄まって9%まで下がる。同じ商品でも、売り方次第で残る利益がまるで違います。

利益が出ないのは努力不足ではありません。大抵チャネルと単価の組み合わせがズレているだけです。数字の内訳はD2C・自社ECの収益の中身で掘り下げています。

オペレーション・インは、売れた後の現場を先に想像することです。ECを潰すのは、実は赤字そのものより、在庫が動かずにキャッシュが詰まることです。あとは業務が増えすぎて、組織が崩れることですね。

3色×5サイズの15SKUは需要が読めず、片方は売り切れ、片方は大量に残る。COHINAのように「小柄女性向け」までターゲットを1点に絞ると、需要が読めて在庫が回ります。誰に売らないかの決め方はターゲティング:誰に売らないかを決めるで扱っています。

業務量も、商品で減らせます。説明書がないと使えない商品は、作っている時点でもう負けています。ボトルに大きく01/02/03を印字しておけば、使う順番が一目で分かってCS(問い合わせ対応)が減る。

梱包も同じです。1個10秒の作業でも、1万個なら27時間かかります。割れない容器を選んで箱に緩衝材を入れておくだけで、この時間をかなり削れます。

単品売りは固定費で27%が消える。3袋まとめなら9%まで圧縮できる。
単品売りは固定費で27%が消える。3袋まとめなら9%まで圧縮できる。

インサイト・イン/コンペティター・イン:顧客インサイトと競合分析で、誰がなぜ買うのか

最後の2つは、顧客の頭の中の話です。

インサイト・インでは、顧客に「何が欲しいですか」と聞きません。返ってくるのは、大抵その場の表面的な答えだからです。機能だけで戦うと、たいてい負けます。宅食サービスが「レンジで5分の絶品ハンバーグ」と機能を謳うと、コンビニやデリバリーと同じ土俵に乗ってしまう。

でも、顧客の本音はそこじゃないんです。「コンビニ弁当ばかりで体に悪そう、ちゃんとした食事を作れていない自分が後ろめたい」。買っているのは料理ではなく、ちゃんとした生活をしているという安心です。

だから監修は、ミシュランのシェフより管理栄養士のほうが効きます。売っているのは商品そのものより、顧客が片付けたい用事のほうだと思っています。

コンペティター・インは、顧客が必ず何かと比べて選ぶ、という前提から組み立てます。押さえるのは3つです。同じ土俵に立つための条件、わざわざこっちを選ぶ理由、避けたい理由。

順にPOP(参加資格、競合と同じでないと候補に入らない点)、POD(買う理由、競合と違う点)、POF(競合の弱点、嫌で買わない理由)と呼んでいます。競合をシーン・イシュー・ソリューションの3層で捉える話は競合を3つの層で読むで扱っています。

バルミューダのトースターに後発で挑むなら、スチームというPODは捨てます。代わりに3万円の価格と、毎回水を入れる手間というPOFを潰して、15,000円で出す。いわば「ジェネリック・ハイエンド」です。なにも全部で上回る必要はありません。

この2つはそれぞれ長くなるので、インサイトの掘り方は顧客インサイトの掘り方で別記事に分けています。

10個が揃うと何が起きるか

10の視点を1つずつ通すと、商品はこうなります。競合が少なくて、刺さる言葉があって、法律面もクリアで、勝手に広がって、利益が出て、運用も回る。

最初に5つに束ねた逆算を全部通すと、商品にはこの6つが揃っています。この6つが同時に揃うと、発売後に広告費と在庫で苦しみにくくなります。

怖いのは、これが逆向きにも効いてしまうことです。トレンドを外せば、そもそも伸びません。コストを見落とせば、売れても利益が出ません。オペレーションを軽く見れば、在庫だけが残ります。

どこか1カ所のズレが、最後は利益や在庫になって跳ね返ってきます。だから10個は、一つずつ順番に潰すんです。

何度も当たる商品企画は、思いつきからは生まれません。市場の現実から逆算して、泥臭く計算した先にやっと出てきます。

6つの条件が同時に立った商品は、発売後に広告費と在庫で苦しみにくい。
6つの条件が同時に立った商品は、発売後に広告費と在庫で苦しみにくい。

最後に

自分は毎回、企画書を書く前にこの10項目を順に潰していきます。派手な作業ではありません。ただ、ここを飛ばした商品ほど、後で在庫の山になります。これは何度も立ち会ってきました。

今手元で動いていない商品を、1つ思い浮かべてみてください。10項目のうち、どこが抜けていたでしょうか。大抵は1〜2カ所に、原因が見つかるはずです。次に手を入れるのは、そこです。

そして次の商品は、作り始める前にこの10項目を順に潰しておく。それだけで、棚に並べた後に動かない商品はかなり減ります。

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