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競合を3つの層で読む。POP・POD・POFで立ち位置を決める

競合はどこですか、と聞くと、たいてい同じカテゴリーの会社の名前が返ってきます。美容液なら他社の美容液、プロテインなら他社のプロテイン。でもお客さんは、買う前にそんなに狭い土俵で比べていません。本当に選択を奪っている相手を見落としたまま、同業とだけにらめっこしている。商品は刺さっているのに売れない、というときの一番多い原因はこれだと自分は思っています。

同業だけを競合だと思うと、足をすくわれる

競合を「同じカテゴリーの会社」だと思い込むと、視野が一気に狭くなります。夜の美容液を売っているとして、頭の中に浮かぶのが他社の美容液5本だけだとします。その5本の中で価格と成分を比べて、少しだけ安くする、少しだけ配合量を増やす。これをやり続けても、なかなか抜けられません。

なぜ抜けられないのでしょうか?

お客さんは、その美容液を買うかどうかを決める前に、もっと手前で別の選択をしているからです。「今日は疲れたから何もせず寝る」「面倒だからオールインワンで済ます」「そもそも美容にお金をかけるか、それとも今月は服を買うか」。同業の美容液が比較の土俵に乗るのは、この手前の選択をいくつか通過した、かなり後のほうです。

同業だけを見ていると、土俵に乗る前にお客さんを逃している事実に気づけません。競合は、広いところから狭いところへ、層になっていると考えたほうが現場に合います。どの層の誰と戦うかは、誰に売らないかを決めるターゲティングの考え方と表裏です。

お客さんはまず広い層で選んでいて、同業同士の比較はいちばん内側のごく一部でしか起きていません。
お客さんはまず広い層で選んでいて、同業同士の比較はいちばん内側のごく一部でしか起きていません。

競合は3つの層で読む

自分は競合を、広いほうから順に3つの層に分けて考えます。シーン競合、イシュー競合、ソリューション競合の3つです。同じ商品でも、お客さんがどの層で迷っているかで、相手がまるで変わります。

一番広いのがシーン競合です。同じ場面、同じタイミング、同じ予算枠を奪い合う相手で、カテゴリーは違っていてかまいません。「今夜、寝る前の30分とこの数千円を何に使うか」という枠の取り合いです。夜のスキンケアという場面でいえば、他社の美容液だけでなく、入浴剤も、好きな動画も、何もせず早く寝ることも、同じ枠を奪っています。

真ん中がイシュー競合です。同じ悩み、片づけたい用事を、別の手段で解く相手を指します。「肌の乾燥をなんとかしたい」という用事に対して、美容液のほかに、加湿器を買う人もいれば、水をたくさん飲む人も、皮膚科で保湿剤をもらう人もいます。手段はバラバラでも、解こうとしている用事は同じです。

一番狭いのがソリューション競合、つまり同じカテゴリーの直接の相手です。他社の美容液同士で、成分や価格や容量を正面から比べられます。多くの人が「競合」と聞いて最初に思い浮かべるのは、ここだけです。

外側のシーンから内側のソリューションへ、内に入るほど相手が同業に近づきます。
外側のシーンから内側のソリューションへ、内に入るほど相手が同業に近づきます。

見落としやすいのは、お客さんが内側の層だけで選んでいるわけではない、というところです。買う手前では、まずシーンとイシューの広い層で「そもそも美容液という手段を選ぶか」を決めている。ここを通過した人だけが、ようやく同業比較の土俵に上がってきます。同業とだけ戦っていると、手前の2層で離れていったお客さんの存在に、まるで気づけません。

どの層で戦うかで、打ち手が変わる

では、自社は今どの層で負けているのか。

3つの層に分けてみると、自社がどこで負けているのかが見えてきます。

シーン競合に負けているなら、そもそも「夜に手をかける」という選択をしてもらえていません。ここで効くのは成分の話ではなく、続けやすさのほうです。1本で済むとか、塗るだけとか、香りで気分が上がるとか。何もしないで寝るより、こっちのほうが面倒じゃないな、と思ってもらえるかどうかです。

イシュー競合に負けているなら、乾燥対策として加湿器や皮膚科に流れています。ここでは「同じ悩みを、これ1本でここまで解ける」と、用事の解き方そのもので勝負します。比べる相手が他社の美容液ではなく加湿器になっている前提で、言葉を組みます。

ソリューション競合まで来て初めて、成分や価格の正面勝負になります。ここに来るまでに2つの層を勝ち抜いている人だけが見ている景色なので、ここだけ磨いても全体の数字はなかなか動きません。広告で最初に止めるべきは、たいていもっと広い層です。クリエイティブをどの層に向けて作るかは広告クリエイティブとKPIの逆算でも同じ考え方で扱っています。

どの層で離れているかで、磨く対象が続けやすさ・用事の解き方・成分に分かれます。
どの層で離れているかで、磨く対象が続けやすさ・用事の解き方・成分に分かれます。

同業に勝とうとする前に、別のカテゴリーに選択を奪われていないかを先に確かめます。競合は同業の中だけにはいません。

立ち位置はPOP・POD・POFの3つで決める

競合の層が読めたら、その土俵での立ち位置を決めます。使うのはPOP、POD、POFの3つです。全部で勝とうとしないのがコツで、それぞれ役割が違います。

POP(同質化点)は、その土俵で候補に入るための最低条件です。これが欠けると、そもそも比較にすら乗りません。夜の美容液なら「肌に合う」「刺激が強すぎない」あたりで、ここを満たして初めてスタートラインに立てます。POPは差をつける場所ではなく、外すと土俵から降ろされる参加資格のようなものです。

POD(差別化点)は、数ある中で自社を選ぶ理由です。これがあるからここにする、という1点。乾燥のイシューで戦うなら「この成分が朝まで効く」をひとつに絞る、といった具合に、買う理由を1本立てます。

3つ目は、相手を選ばない理由をこちらから作ることです(ここでは便宜上POFと呼びます)。競合の「ここが嫌だ」を解消して、わざわざあっちを選ばなくていい状態にします。たとえば定番品にありがちな容器の出しすぎや使いにくさが声に挙がっているなら、そこを直す。選ぶ理由とは別の軸で、相手の引っかかりを外すと、迷っていた人がこちらに寄ります。

POPは土俵に乗る条件、PODは選ばれる理由、POFは相手を外す理由。3つは役割が別です。
POPは土俵に乗る条件、PODは選ばれる理由、POFは相手を外す理由。3つは役割が別です。

この3つは、競合の3層とそのまま重なります。POPは「その土俵に乗るための条件」なので、どの層で戦うかを決めれば中身も決まります。PODとPOFは、その層の相手に対して立てます。シーン競合と戦うときのPODと、ソリューション競合と戦うときのPODは別物です。層を決めずに「うちの強みは何か」と考え始めると、それが誰に向けた強みなのか、ぼやけてしまいます。

全部で上回ろうとすると、たいてい誰にも刺さらなくなります。役割を分けて、ひとつずつ立てれば十分です。

捨てる判断が、買う理由を作る

PODとPOFで効くのは、足すことより捨てることのほうが多いです。差別化というと機能を1つ増やしたくなりますが、相手の弱点を外すために、あえて何かを削るほうが買う理由になることがよくあります。

家電だと、高級トースターのスチーム機能と価格を思い切って外して、その分安くした後発品が支持された例があります。詳しくは別記事にゆずりますが、外した結果として「あの値段も手間もいらない人」の買う理由が生まれました。つまり捨てたことが、そのままPODとPOFになっているわけです。POP・POD・POFの掘り下げと、お客さんが本当に片づけたい用事の読み方は顧客インサイトの掘り方で詳しく扱っています。

美容液に戻すと、全成分テンコ盛りで全方位に効くと謳うより、乾燥という1つの用事に絞って、定番品で引っかかりやすいところだけを外す。これでイシュー競合の中での立ち位置がはっきりします。全部で上回ろうとすると、原価が膨らむ割にどの層の誰にも刺さらない、ぼやけた商品になります。何を捨てて何に寄せるかを資源配分として決める順番はECの戦略は絞る・配る・捨てるで決まるでも扱っています。広告やLPで他社を名指しで下げる書き方は景表法(不当な比較・他社誹謗)の引っかかりになりやすいので、相手を貶めるのではなく、自社が外した事実だけを言い切るのが安全です。化粧品やサプリは標榜できる効果の範囲が薬機法で決まっているので、その枠の中で何を一番に立てるかを選んでください。

全方位に機能を盛るほど誰にも刺さらず、用事を1つに絞って相手の弱点を外すと選ぶ理由がくっきりします。
全方位に機能を盛るほど誰にも刺さらず、用事を1つに絞って相手の弱点を外すと選ぶ理由がくっきりします。

どの層で戦い、何を満たし、何を立て、何を捨てるか。ここまで決まると、商品の中身そのものを逆算で組み直せるようになります。市場の条件から商品を決める順番は売れるEC商品は逆算で決まるでまとめています。

最後に

競合分析というと、同業の商品ページを並べて表にする作業になりがちです。でも現場でいちばん効くのは、その手前で「お客さんはこの瞬間、本当は何と迷っているのか」を考え直すことのほうです。同業ではなく、動画や睡眠や加湿器に負けているのかもしれません。

まずは直近で買ってくれた1人を選んで、その人がこの商品を買う直前、ほかに何を選びかけていたかを書き出してみてください。同業の名前が出てこないことのほうが多いはずです。そこに出てくるのがシーン競合やイシュー競合で、本当に戦う相手です。相手が決まったら、POPで土俵に乗り、PODを1つ立て、相手の弱点を1つ外す。これだけで、見出しも価格の見せ方も変えられます。

競合をどの層で戦うかは、商品・チャネル・販促を分けずに見るEC・D2Cの売上を伸ばす全体像の中の一部です。どこで戦うかが決まると、ほかの打ち手も揃えやすくなります。

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