EC
コピーライティングは「言葉で売る」
同じ商品なのに、見出しを一行変えただけでクリック率が倍になる。LPの最初の一文を書き直しただけで、購入率が動く。自分はこういう場面に、何度も立ち会ってきました。商品の中身は一ミリも変えていません。変えたのは言葉だけです。
EC・D2Cの現場だと、デザインや広告予算の話は活発なのに、文章はなぜか後回しにされます。でも、お客さんが商品ページで触れているのは、写真と、そして言葉です。今日は、その言葉で売るという話を、商品名・見出し・LP・広告文の具体で書いていきます。
機能を並べても、お客さんは自分ごとにできない
商品ページを開くと、スペックがずらっと並んでいることがよくあります。「ビタミンC1000mg配合」「内容量120g」「特許取得の独自製法」。どれも嘘ではないし、立派な機能です。でも、ここで終わっているページは、だいたい売れません。
理由はシンプルです。お客さんは機能を読んでも、自分にどんな得があるのかまで、頭の中で変換してくれないからです。「ビタミンC1000mg」と書かれても、それが自分の何を解決するのかは、書き手が思うほど伝わっていません。
だから自分は、機能を一度「で、お客さんは何が嬉しいのか」まで言い直します。「ビタミンC1000mg配合」なら、その先にある「夕方まで、まだ頑張れる」まで書く。お客さんが手にする状態、ベネフィットまで言葉にして、ようやく自分ごとになります。なお、サプリや化粧品は、この言い換えがそのまま薬機法に触れることがあります。言える範囲は最後の章で触れます。

気をつけたいのは、機能を消せという話ではないところです。信じてもらう根拠として機能はいる。順番の問題です。先に得を見せて、その理由として機能を置く。「ビタミンC1000mg配合だから、夕方まで頑張れる」ではなく、「夕方まで頑張れるのは、ビタミンCを1000mg入れているから」。同じ材料でも、得を先頭に出すだけで読み手の入り方が変わります。
ここで書くベネフィットの中身は、お客さんが本当に片づけたい用事から引っぱってきます。その掘り方は顧客インサイトの掘り方に詳しく書いたので、ここでは「掘った本音を、どう言葉に変えるか」に集中します。
最初の一行で、手が止まるかどうか
どれだけ本文を練っても、最初の一行で読まれなければ、その先は無いのと同じです。広告のフックも、LPのファーストビューも、メールの件名も、勝負は冒頭で半分以上ついています。
では、手が止まる一行はどういうものか。自分の感覚だと、読んだ人が「あ、これ自分のことだ」と思える一行です。きれいな言葉でも、上手いキャッチコピーでもありません。お客さんが頭の中で抱えている困りごとを、そのまま先に言ってあげる一行です。
例えば青汁。「栄養豊富な国産大麦若葉100%」と書くか、「野菜が足りてないのは分かってる。でも作る時間がない」と書くか。前者は商品の説明で、後者はお客さんの独り言です。指が止まるのは、たいてい後者です。
見出しは、こちらが言いたいことを言う場所ではありません。お客さんが心の中で言っていることを、先に代わりに言ってあげる場所です。
もう一つ効くのが、読み手の中に小さな引っかかりを作ることです。「実は、朝のプロテインは逆効果かもしれません」と言われたら、いつも朝に飲んでいる人は気になって続きを読みます。言い切りすぎず、根拠は本文で出す。冒頭で全部を言い切らないのも、読んでもらうコツです。

商品名も、実は最初の一行と同じ役割を持ちます。モールの検索結果に並んだとき、商品名の頭の数文字で選ばれるかどうかが決まります。ここは検索される大きい言葉と、得が伝わる言葉の両方を入れたいところです。モールの検索結果での並ばせ方はAmazon・楽天のモール攻略、市場から逆算した名前の付け方は商品企画を市場から逆算するで扱っているので、ここでは見出しと本文の言葉に絞ります。
自分の言葉でなく、お客さんの言葉を借りる
書き手がいちばんやりがちなのが、自分たちの社内用語で書いてしまうことです。「高純度」「次世代処方」「こだわりの製法」。作っている側には意味があっても、お客さんは普段そんな言葉を使いません。
自分が文章を書くとき、まず開くのはレビュー欄とお問い合わせの履歴です。そこに、お客さんが実際に使っている言葉が、ぜんぶ書いてあるからです。「ベタつかない」「朝までもつ」「子どもが残さず食べた」。こういう生の言葉を、そのままコピーに持ち込みます。
例えばスキンケアで、社内では「高保湿処方」と呼んでいた商品があったとします。でもレビューを読むと、みんな「夕方になっても顔がつっぱらない」と書いている。なら、見出しは「夕方になっても、顔がつっぱらない」にします。こちらが選んだ言葉より、お客さん自身の言葉の方が、当のお客さんに届きます。

これはレビューを写すだけの単純作業ではありません。お客さんがどんな場面で、どんな言い回しで困りごとを口にしているか。それを読み取って、こちらの売り文句に言い換える作業です。
もう一つ、お客さんの言葉は検索の面でも効きます。みんなが使う言い回しは、そのまま検索される言葉でもあるからです。社内用語で書くと、検索でも見つけてもらえません。お客さんの言葉で書くのは、読みやすさと見つけやすさの両方に効きます。
具体と数字で、はじめて信じてもらえる
得を、お客さんの言葉で、冒頭から書く。ここまでで読まれる準備はできます。でも読まれても、信じてもらえなければ買ってもらえません。最後に効くのが、具体と数字です。
「たくさんの方に選ばれています」と書くか、「累計38万本、リピート率68%」と書くか。「すぐ乾きます」と書くか、「ドライヤーいらず、5分で乾く」と書くか。ふわっとした形容詞は読み飛ばされて、具体的な数字は引っかかります。
数字がないときは、場面を具体にします。「肌にやさしい」ではなく「生後3ヶ月の赤ちゃんにも使える」。「飲みやすい」ではなく「水なしで、口の中でラムネみたいに溶ける」。読んだ人が頭の中で絵を描けるところまで具体にすると、急に本当っぽくなります。
うまいことを言うより、本当のことを具体的に言う。自分が見てきた信じてもらえるコピーは、ほとんどこっちでした。
ここで一つだけ注意があります。サプリや化粧品なら、書ける表現は薬機法で決まっています。効きそうに盛りたくなる気持ちは分かりますが、攻めすぎると広告そのものが止まります。それと、累計本数やリピート率みたいな数字は、出すなら根拠の出せる実数だけにします。手元にある本当の数字でなければ、景表法で優良誤認になって、最悪は表示の取り下げや指導に進みます。言える範囲の中で、いちばん具体的に、いちばんお客さんの言葉で書く。言える範囲の中で、いちばん具体的に書く。これが現場の仕事だと思っています。

LPは、一行ずつ次を読ませる流れで組む
ここまでの話は、一つひとつの言葉でした。LPになると、それを順番につなぐ話になります。自分がLPを書くとき意識しているのは、一行読んだら次の一行を読みたくなる流れを切らさないことです。
最初に、お客さんの困りごとを言い当てる。「分かってる、でもできない」と頷かせる。次に、その困りごとがなぜ起きるのかを軽く説明して、放っておくとどうなるかに少し触れる。そこで「だからこの商品があります」と解決を見せる。理由として機能を出し、レビューや数字で信じてもらい、最後に背中を押す。
テンプレートの名前を覚える必要はありません。見るべきは、各ブロックの最後の一行が、次のブロックを読みたくさせているかどうかです。困りごとを言い当てた直後に、いきなり成分表が出てきたら、流れは切れます。読み手の気持ちが、上から下へ素直に流れているか。自分はこれを一行ずつ確かめます。

そして、LPの言葉は単独では完成しません。同じメッセージを、広告のフックでも、商品ページでも、同梱物でも、ひと続きに揃える。広告で「夕方もつっぱらない」と言って入ってきた人が、LPでは別の話をしていたら、気持ちが途切れます。言葉と映像、媒体ごとの効かせ方は効く広告クリエイティブとKPIの逆算で扱っています。ファーストビューやフォーム、カゴ落ちといったLPの導線の直し方はLPで離脱とカゴ落ちを直すに譲って、ここは言葉の流れだけに絞りました。
言葉を揃える作業は、商品・売り場・販促をバラバラにしない動きの一部でもあります。全体をどう揃えるかはEC・D2Cの売上を伸ばす全体像にまとめています。
最後に
コピーライティングと聞くと、才能やセンスの話に思われがちです。でも現場で効くのは、ほとんどが手順の積み重ねです。お客さんの得まで翻訳する、最初の一行で手を止める、お客さんの言葉を借りる、具体と数字で信じてもらう、一行ずつ次を読ませる。この順番でやれば、自分の手元のページから今日でも直せます。
まずやってほしいのは、自社の商品ページの最初の一行を、声に出して読んでみることです。それが商品の説明になっていたら、お客さんの困りごとを言い当てる一行に書き直してみる。レビュー欄を一周して、お客さんが実際に使っている言葉を三つ拾う。それだけで、見出しの手触りが変わります。効いたコピーは、たいていこの一行を書き直すところから始まっていました。